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視覚障害者クライマー 小松範明

今回は視覚障害者クライマー小松範明さんにお話をうかがいました。

クライミングとの出会いは奥様の勘!?
小松範明

衛藤(以下「衛」) みなさん、こんばんわ。只今から視覚障害者クライマー小松範明さんとのインタビューを始めます。インタビュアーは株式会社JMSの衛藤がつとめます。よろしくお願いします。

  まずは自己紹介をお願いします

小松(以下「小」) 皆さん始めまして、小松範明です。1972年12月、宮城県気仙沼市生まれ。幼い頃より視力は弱かったが、高校までは普通学校に通う。高校卒業後、鍼灸師を目指して筑波技術短大へ進学。鍼灸師となる。2000年6月、宮城県仙台市にて鍼灸治療院を開業する。

 ではクライミングをやるようになったきっかけを教えてください

 以前よりスポーツをしたいとは考えていたわけですが、私(視覚障害者)と妻(健常者)が一緒に楽しめるものがないかと探していたわけです。

 しかし、障害者スポーツというものは、障害者向けにルールや用具がデフォルメされていて、健常者が一緒に楽しむには難しかったり、物足りなさを感じたりするものが多く、夫婦で参加できるものが見当たらなかったのです。

 そんな折、妻(当時は彼女)が新聞の折込に入っていたタウン誌に、クライミングの記事を見つけたわけです。妻は何か感じるものがあったようで、私に内緒でクライミングジムを見学してきました。

 「Zi;box(ズィーボックス)」というジムだったわけですが、そこでは偶然にも視覚障害者も共に参加できるクライミング教室「モンキーマジック・スクール」を開催していたのです。

 妻は「これだ!」ということで、一も二も無く私を連れて行くことに決めたのでした。そんな2008年6月、私は初めてクライミングに参加したのです。

自分で問題解決をしなければ・・・
小松範明

 なるほど、奥様が小松さんとクライミングを引き合わせたわけですね!では、クライミングの魅力を教えてください

 まず、クライミングというスポーツは、対戦型の種目ではありません。与えられた課題を、自分の力だけで登り、ゴールを目指していきます。コンペなど大会でもない限りは制限時間もありません。ホールドと呼ばれる突起物に手や足をかけて登っていきます。

 この「登る」という動作、あらゆるスポーツにおいても珍しい運動方向でありますが、視覚障害者には未知の方向でもあります。これを、登っていく課題のルートをオブザベーション(使用してもいいホールドの位置、形状、方向をゴールまで教えてもらうこと)してから登っていきます。

 実際に登ってみてから「あれ、次のホールドが遠いな」とか、「おや、この体の向きでは届かないぞ」とか、「このホールドは持ちが悪いじゃないか」と、登るたびに新しい発見があるのです。そして、何よりゴールした時の達成感は何物にも代え難い感覚と喜びを得ることが出来ます。

 自力で問題を解決する能力を要求され、自分の身体能力の瞬発力、バランス力、持久力をも同時に要求されます。諦めてしまえば、そこで終わり。自分に負けるわけです。そして、視覚に障害が有っても、健常者であっても、登っていく課題に何らの違いがないことも魅力です。

 もちろん、不慮の落下に備えて、ロープで身体を確保しつつ、安全に留意しながら登坂していくわけですが。見えているから登れるとも限らず、見えていないから登れないとも限らないのがクライミングの楽しさです。

 壁に対峙してしまえば、条件は同じ。こんなユニバーサルスポーツとしてのクライミングが好きなわけです。本当の意味での「バリアフリー」かもしれません。

 健常者の方と視覚障害をお持ちの方でも課題は一緒。確かにバリアフリーなスポーツかもしれませんね。練習や競技の際にどこに一番注意しますか?

 まず一番に気をつけているのは、怪我をしないようにするということです。いかに安全に登っていくのかが大切になっていきます。見えていれば、クライミング動作で「飛びつき」のようなことも出来るわけですが、見えていないので危険を冒さないように留意しながら登っていきます。

 もちろん、限界まで力一杯登ります。一度掴んだホールドを、いかに離さないように保持していくか、次の一手を取りに行くムーブを起こしていけるかに留意しています。競技の際には、どれだけ高いホールドを保持できたかがポイントとなるわけですから。

 「飛びつき」と言う動作はどのようなアクションですか?それと基本的なことで申し訳ないのですが、高ポイントになる条件を教えていただけますか?

 「飛びつき」と言っているのは、ホールドに手を掛け、足を載せて登っていくルートで、どんなに背伸びをしても次のホールドにギリギリ届かないか、全く届かない時にジャンプしてホールドを掴みに行く「デッド」や、「ランジ」と呼ばれるムーブを指しています。

 次のホールドの下端でも触れられれば、そこからホールド位置を推測してジャンプしてデッドで掴むことも可能なのでしょうが、全く触れることが出来ずにいた場合、ランジで掴みに行くのは非常に難しいムーブになります。

 なので、次のホールドまでの距離を測りにくい視覚障害クライマーには苦手な動作になりますね。それから、高ポイントになる条件についてですが、クライミングという競技はとても明快なポイント制度なんです。

 一番ポイントが高いのは何をいっても「ゴール」です。登っていくルートの頂上にある終了点「ゴールホールド」を両手で保持出来ると最高点です。そこから少しずつポイントが下がっていきます。

 例えば、10手目がゴールの課題だった場合、ゴール保持は「10normal」、保持出来なかったがタッチした「10−」、10手めホールドにタッチ出来なかったが9手目ホールドを保持して10手目へのムーブを起こした「9+」、9手目を保持した「9normal」となります。

 スタートホールドから数えていけば、この逆になっていきます。ですので、1手でも上のホールドを目指して、フォールする瞬間まで登り続けるムーブを起こしていくわけです。

 なるほど、ただ頂上まで登って行くのがクライミングと言うわけではないんですね!それではクライミングを通してなにか実現したいこと、訴えたいことはありますか。

世界選手権金メダルを目指して!
小松範明

 クライミングを通じて、視覚障害者も健常者も全く同じスポーツに取り組んでいけることを知ってもらいたいですね。もちろん、そのためにはクライミングというスポーツを視覚障害当事者の皆さんに知ってもらう必要があるわけです。

 そのためにも、私のような視覚障害クライマーがIFSC(国際クライミング連盟)、JMA(日本山岳協会)、JFA(日本フリークライミング協会)などのような正規の団体が開催する大会にエントリーし、出場し、成績を納めていく必要があるわけです。

 そして、新聞やテレビ、雑誌、ネットというメディアに広く取り上げてもらい、一人でも多くの視覚障害者にクライミングを楽しんでもらいたいと思っています。

 クライミングというスポーツは、クライミングジム(インドア)でも、岩場(アウトドア)の双方で楽しむことの出来るスポーツでもあります。

 インドアであれば天候に左右されること無く体を動かせますし、アウトドアであれば移動そのものが小旅行であり四季折々の自然の移ろいを肌で楽しむことが出来ます。そして、世界各国でクライミングに取り組む視覚障害者と交流することも出来るのです。
 

 視覚障害の方でも楽しめるスポーツ。もっと多くの方に知ってもらってクライミングを楽しんでもらえると素晴らしいですね。インドアでも、アウトドアでも楽しめるスポーツと言うのも魅力的ですね。では今後の夢、目標を教えてください。

 昨年12月に千葉県習志野市で開催された「IFSC 第1回 視覚障害者クライミング世界選手権 2010inNarashino,Chiba」ではB1クラスで銅メダルの成績を納めることが出来ました。

 今年は7月にイタリアのアルコを会場に「IFSC 障害者クライミング世界選手権 2011 in Arco,Italy」が開催されます。昨年同様、B1クラスでエントリーしています。今年こそ金メダルを目指して登ります。

 被災地・仙台からの出場ですので、絶対にまけるわけにはいかないのです。

 クライミングを始められて2年半あまりで銅メダルですか!すごい!イタリアの大会で金メダルを取って被災地の方に報告できると大きな希望となりますね!その他なにかPRしたいことがあればお願いします

 今回の世界選手権出場に当たっては、NPO法人モンキーマジックとJFA(日本フリークライミング協会)の、「ガンバ!募金仙台の視覚障害者クライマーを世界へ!」呼びかけによってエントリーが叶いました。

 多くのご支援賜った皆様方のお気持ちに応えられるよう、日の丸を背に世界に挑戦してきます。

 世界選手権、金メダル取れることを祈っています!本日はありがとうございました。

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